マッチングアプリで初めて会った人の話。両手を天高く上げて待っていた

人を探すエリンギちゃん 婚活日記

マッチングアプリで初めて会った人の話をする。

結論から言うと、待ち合わせ場所で両手を天高くまっすぐ上げたまま、微動だにしない人がいた。

周囲の視線を集めていた。デートなのに、ボロボロのコートを着ていた。

それがわたしのお相手だった。


出会いのきっかけ:顔写真が、なかった

そのひとのプロフィール写真は、料理だけだった。

きれいに盛り付けられた料理の写真が3枚。顔は1枚もない。

(普通に返信しない案件だよな…)と思った。思ったんだけど、アプリ内でのやり取りがすごく丁寧で、言葉の選び方が穏やかで、なんとなく信じてしまった。

「会ってみないとわからないし」という言葉、自分への言い訳として最強すぎる。今のわたしなら止める。当時のわたしは止めなかった。

土曜の昼に会う約束をした。これが最初の失敗だったと、後で思う。


待ち合わせ:「両手を上げますね」

待ち合わせ場所に着いたけど、人が多くて見つけられない。「ついた」とLINEしても、向こうも見つけられないと返信が来た。

「どこにいますか?」と送ったら、こう返ってきた。

「両手を上げますね」

(えっ、どういうこと?)と思いながら周りを見回すと——

いた。

両手を天に向かってまっすぐ上げたまま、びくとも動かない人が。

周囲の人が何人かちらちら見ていた。わたしも見た。

(あの人だ。絶対あの人だ。でも声をかけたくない)

コートがボロボロだった。デートなのに。ボロボロのコートで、両腕を天高く捧げていた。

(見た目で判断してはいけない。ドタキャンも失礼。それより早く手を下ろさせないとこの人がずっと人目にさらされ続ける)と自分を鼓舞して、近づいた。

向こうがこちらに気づいて、目が合った。

顔を見た瞬間——タイプじゃなかった。

(あーーー)という音が頭の中でした。声に出してなくてよかった。

「こんにちは!」と笑顔で言った。そこから約4時間、その笑顔を維持し続けることになる。


天ぷら屋:予約なし・量が多い・椅子が1つ・トイレが1つ

天ぷらと戦っているエリンギちゃん

「行きたい店があって」と連れていかれたのは、老舗の天ぷら屋だった。

土曜の昼です。予約はしていない。「混んでますかね?」と聞いたら「わかりません」と言われた。

(調べてから連れてきてほしかった……)

案の定、2組待ちだった。

待合の椅子は1つだけ。「どうぞ」と言われて座った。

すると彼が、座ったわたしの真正面に立った。

お腹の高さと、わたしの顔の高さが、ほぼ同じだった。

(近い。近い近い近い近い近い)

その距離のまま、普通に話しかけてきた。わたしは「そうなんですね〜!」と言いながら、視線の置き場所だけに全神経を集中させていた。幸いすぐ隣のスペースが空いて、「そちら座ってください!」と誘導して解放された。助かった。本当に助かった。

通されたのはカウンター席。目の前でどんどん揚げていくスタイルで、隣との間隔も狭い。お互いの肘がほぼ触れる距離。

量がものすごかった。

老舗の天ぷら屋ってそういうところあるよね、ボリューム満点。だから人気なんだと思うんだけど、今日のわたしにとってはつらかった。残すのが申し訳ない気がして、頑張って食べていたら、途中から胃が「もう無理」と言い始めた。人生で一番食べた記録を更新した。

あと——箸の持ち方が独特だった。「指先のあいだで小さな内戦が起きている」という感じの持ち方で、気になりたくないのに視界に入るたびに気になった。(気にしてはいけない、気にしてはいけない)と念じながら、気になり続けた。

そしてトイレが1つしかなかった。

個人経営の小さなお店って、トイレが1つのことが多いじゃないですか。しかも人気店だから常に誰かが入っていて、タイミングがない。入れなかった。

女子的な話をすると、デート中ってトイレに行くタイミング自体が難しくない?「ちょっとトイレ」って席を立つだけで「長い」とか「何回も行ってる」みたいに思われる気がして(実際には思われてないかもしれないけど)、ちょっと気を使う。さらに個人店で1つしかないとなると、行ける気がしなくなってくる。

この時点でトイレに行けていない。ただ天ぷらを食べ続けていた。


カフェ:「次のお店も予約してあります」

天ぷら屋を出た。お腹は完全に限界だった。

「もう一軒行きましょう」と言われて(え、もう一軒……?)と思っていたら、「ケーキがおいしいカフェを予約しておきました」と言われた。

(天ぷら屋は予約せずに来て、カフェは予約していたのか……)

そのツッコミを飲み込んで、行った。断れなかった。

断れない問題、わかる人いると思う。「疲れたので帰ります」って普通に言えたら楽なんだけど、それが言えないから消耗するんだよね。いい顔したいとかじゃなくて、なんか言えない。言えない自分にも後からちょっとムッとする。

カフェはかわいい雰囲気で、ちゃんとリサーチしてくれたんだなという気持ちは伝わった。お腹がMAX限界でなければもっと楽しめたと思う。ケーキも多分おいしかった。あんまり覚えていない。

テーブルについて、会話が始まった。

話の8割が彼のターンだった。

  • 「自分は人に好かれないタイプで」
  • 「友達も少なくて」
  • 「よく変わってると言われるんですよね」

(う〜〜ん……)

「そんなことないですよ」「そうなんですね」「大変でしたね」の3択で返し続けながら、わたしはカウンセラーになっていた。

「よく変わっていると言われる」については、数時間で心当たりが3〜4個浮かんでいたので、「そんなことないですよ」と言いながら内心(いや、あります)と思っていた。でも言えない。言えない女。

そしてこのカフェもトイレが混んでいた。

しかも席の位置が最悪で、トイレに並んでいる間ずっと彼と向き合う形になる配置だった。待ってる間ずっと目が合いそうで、行けなかった。天ぷら屋から合計で2〜3時間、一度もトイレに行けていない。

笑顔と膀胱の両方を同時に限界まで保ちながら、カウンセリングを続けた。

女子でデート中にトイレ行けなかった経験ある人、いるよね。あの「行きたいけどタイミングない、でも限界近づいてくる」感じ、ほんとしんどい。しかもそれを顔に出せないのがまたしんどい。


別れ際:走って去った

走り去る人を見るエリンギちゃん

会計後(天ぷら屋は出してもらって、カフェはわたしが払った)、駅まで歩いてバイバイという流れに。

やっとトイレに行けるーーー!となった。

が、しかし、彼は駅前でまたしばらく話し出した。。。

彼が、言った。

「自分はこんな感じで全然自信がないんですけど、エリンギさんはすごく親身に話を聞いてくれて、本当に感動しました。また会いたいです。また連絡します。」

言い終わった瞬間——走って去った。

(え?)

振り返らず、走っていった。

(え??走った??)

走って去るタイプの人間がいることを、このとき初めて知った。

わたしもすぐにトイレへ走った。

駅のトイレに飛び込んだとき、心底ほっとした。天ぷら屋からずっと我慢していた。デートの解放感とトイレの解放感が同時に来て、変な感じだった。

帰り道、「疲れた」しかなかった。

後日、丁寧に連絡が来た。丁寧にお断りした。


同じ目に遭わないための5つのこと

笑いながら書いているけど、当日は全然笑えなかった。ただただ消耗していた。同じことを繰り返したくないので、この日以来変えたことを正直に全部書く。

① 顔写真がない人には、会う前に必ず写真をもらう

料理だけ・景色だけのプロフィール写真で「やり取りが丁寧だったので会うことにした」、わたしが踏んだ地雷はここだった。

顔写真がない理由はいくつか考えられる。

  • 身バレが怖い(職業柄・知人にバレたくない)
  • 自分の写真に自信がない
  • そもそもあまり考えていない

どれも理解できる事情ではある。ただ、どんな理由であれ、会う前に顔がわからない状態でOKを出すリスクは自分が全部引き受けることになる。

この日の失敗以降、顔写真がない人には会う前に必ず写真を送ってもらうようにした。「会う前に確認したいので、写真を1枚送ってもらえますか?」と聞くだけでいい。嫌がる人とは会わなくていい、とも思えるようになった。

ここで大事なのは、「会ってから気づいても取り返しがつかない」という点だ。何週間もやり取りしてから会うと、その時点ですでに情が入ってしまっていて、タイプじゃなかったとしても「せっかく来たし」と自分に言い訳してしまいやすい。写真確認は「好みかどうか」だけじゃなく、その後の自分の判断を狂わせないためでもある。

② 待ち合わせの目印は事前に具体的に決めておく

「両手を上げますね」は向こうの判断だったけど、そもそもわたしも「改札前にいます」くらいしか伝えていなかった。それが曖昧すぎた。

この日以降、待ち合わせのときは事前に「何色の服を着ているか」「どこの改札のどのあたりにいるか」を必ずLINEで共有するようにした。相手にも同じことを聞く。これをしておくだけで、「両手を上げますね」事案はかなり防げる。

人混みの多い場所で会う場合は、「〇〇のお店の前」「〇番出口の左」くらい具体的に決めておくと、お互い変な行動をしなくて済む。

③ 初回は「1軒・1〜1.5時間」で終わる設計にする

この日の失敗は、最初から逃げられない構造に入ってしまったことだった。天ぷら屋→カフェの合計5時間、合わないとわかっていても「断れない」ので消耗し続けた。

初回デートの設計として、今はこれを基準にしている。

OKできれば避けたい
カフェ・ドリンクだけの店ガッツリした食事(量が読めない)
チェーン店(トイレが複数ある)個人経営の小さな店(トイレが1つ)
1時間前後で切り上げやすい場所予約が入っている2軒目がある状態
駅近・すぐ解散できる立地移動が発生する観光地・遠い場所

合う人なら2軒目に誘えばいい。合わない人なら「1軒で終わり」にできる。この設計をしておくだけで、消耗する時間がかなり減った。

あと、「次の予定がある」を事前に仕込んでおくのも有効だった。「その日の夕方に用事がある」と最初から伝えておけば、「もう1軒行きましょう」と言われても「今日は難しくて…」と自然に断れる。断るための嘘をつくのが嫌なら、本当に予定を入れておけばいい。

④ ネガティブ自己開示が多い人の「パターン」に気づく

「自分は人に好かれない」「友達が少ない」——この手の発言が初対面で多い場合、その人の会話の「型」がネガティブ寄りである可能性が高い。

なぜこういう話が出るかというと、大抵は「否定してほしい」「共感してほしい」という気持ちからだと思う。「そんなことないですよ」と言うと安心する。で、また別のネガティブが出てくる。この繰り返しになりやすい。

問題なのは、これが1回のデートで終わらない可能性があることだ。付き合ったとして、この会話スタイルがずっと続くとしたら、自分はそれに付き合い続けられるか。初回の会話で「話の何割が相手のネガティブな話か」を少し意識してみると、その後のことが見えやすくなる。

目安として感じているのは、話の半分以上が相手の自己否定・愚痴・過去の不満で埋まる場合、2回目に会うかどうか慎重に考えた方がいいということ。1回くらいはそういう日もある。でも初対面からそうなら、それがその人のデフォルトだと思っておいた方が正確だった。

⑤ 「合わない」と思ったら、早めに正直に動く

この日いちばん後悔したのは、カフェに行くとき断れなかったことだ。「疲れたので今日はここで」と言えれば、お互い1時間は節約できた。

断れない理由はわかる。「せっかく来てくれたのに」「気まずくなるのが嫌」「悪い人じゃないし」——全部思った。でも、無理して続けた5時間は、正直お互いのためになっていなかったと思う。こちらはカウンセラーになって消耗し、相手は「また会いたい」と言って走って去っていった。

「合わない」と感じたときに使いやすい言葉を、今は事前に考えておくようにしている。

  • 「今日は楽しかったです、また機会があれば」(次を確約しない)
  • 「このあと少し用事があって…(事前に仕込んでおく)」
  • 「今日はここで失礼しますね」(とにかく言い切る)

その場でとっさに言葉が出ないので、事前に用意しておく。断り文句は準備しておいて損がない。


まとめ:「会ってみないとわからないこと」と「会う前に整えられること」は別

顔・声のトーン・距離感のとり方・身だしなみ・会話のペース——これは会ってみないとわからない。どんなに準備しても、実際に会ったら「違う」と感じることはある。それはしょうがない。

ただ、この日の失敗のほとんどは、会う前に整えられることをしていなかったから起きた。

  • 写真を確認しなかった → 会ってから気づいた
  • 待ち合わせの目印を曖昧にした → 「両手上げますね」が起きた
  • 初回の場所・時間を設計しなかった → 5時間抜け出せなかった
  • 断る言葉を準備していなかった → カフェも断れなかった

全部、事前に決めておけることだった。

「マッチングアプリは運だから」と思っていたけど、実際には設計できる部分がけっこうある。その設計をサボると、この日みたいに消耗する。それだけのことだったと、今は思っている。

マッチングアプリで誰に返信して誰に会うかを絞り込んだ話は、前の記事に詳しく書いているので参考になれば嬉しいです。

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